前作 “Taking The Long Way” から何と14年振りの作品です。(2020年リリース)
あちこちでニュースになっているのでサラッと書きますが、グループ名から “Dixie” を取り、本作からは 「ザ・チックス」(The Chicks)として活動しているようです。
さて本作ですが、前作から更にポップ色を強めている感じはします。とは言っても、彼女たちのルーツと言っても良いブルーグラスの感覚はまだ残っていて、そこがカントリー畑で大いに売れ、更に売れるためにポップに完全転向してしまった某シンガーとは違うところでホッとさせられます。
冒頭のアルバムタイトル曲である “Gaslighter”、最初タイトルを聞いたときはタバコのライターのことだと思ったのですが、歌詞を聞いていくと違う意味であることに気付きます。
アメリカでもここ最近時々耳にするようになった言葉なのですが、意味合いとしては「事実ではないことを言って周りを混乱させる人」という感じでしょうか。
Gaslighting という言葉があり、例えば「未だかつてない好景気である」ととある政治家が発言すると、実際全くそんなことはないのにも関わらず聞いた人が「そうなんだ、今は好景気なんだ」と思ってしまう。これをGaslightingと言うようです。
トランプ大統領の諸々の発言に対して Gaslighting という言葉がポピュラーになっているみたいですが、この Gaslighting というのは、リードシンガーのナタリー・メインズの元夫に対して歌っている歌だと言われています。
その流れで2曲目のSleep At Nightでも、「夫のガールフレンドの夫が『何いやってくれてるんだ』と連絡してきて/あまりにひどくて笑うしかない/だけどもうすぐ大人になる2人の息子のことを考えてみると/笑い事でも何でもない」とか、実にドロドロした内容なんですが、曲だけ聴くとその雰囲気をあまり感じさせないのですね。
(いやはや、恐いですね。悪いことをしちゃいけません。)
全ての曲がこういった内容ではないのですが、冒頭の2曲でこう言う感じですと、いかに元夫に対する不満が溜まっていたのかというのがわかるというものです。
アルバム全体を包む雰囲気は、ポップ感は持ちながらもブルーグラス、カントリー感はしっかり持っていて、メンバーも以前と変わらず、久し振りのナタリー・メインズのヴォーカルも変わりなく、相変わらずトゲもあるという、ザ・チックスらしい、とても良い作品だと思います。
Tracks:
01: Gaslighter
02: Sleep At Night
03: Texas Man
04: Everybody Loves You
05: For Her
06: March March
07: My Best Friend’s Weddings
08: Tights On My Boat
09: Julianna Calm Down
10: Young Man
11: Hope It’s Something Good
12: Set Me Free
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