トッド・ラングレン、1989年発表のアルバムです。
1985年の前作”A Cappella”で、アカペラの定義を変えてしまった彼の次作、つまり本作は、打って変わってバンド形式の見事なソウル/ポップアルバムとなりました。
最大の特徴は、冒頭の”The Want Of The Nail”のイントロでのボビー・ウォーマックのヴォーカル、最後の”I Love My Life”でのナラダ・マイケル・ウォルデン指揮によるゴスペル調コーラスと言う、今までになかった多くのアーティストの起用です。
トッド・ラングレンというと、マルチプレーヤーということもあり、一人でアルバム制作作業をしていくイメージだったんですが、今回はバンドスタイル感が強い作品です。
なんと言っても、マルチプレーヤーなのに本作で彼が演奏するのはギターのみ。他の楽器は参加ミュージシャンたちに任せているんです。
全体的な印象としては、本作でも天才的メロディーメーカーである彼の素晴らしい曲、歌詞、そしてヴォーカルが堪能できるところです。本作では特に聞きやすいポップな曲が印象的。それまでの彼の作品と比べると、分かりやすい明るさに驚きます。”The Waiting Game”、”Parallel Lines”、”Fidelity”などはとろけそうに甘いメロディー。そしてこれらのヴォーカルもさすがトッド、うますぎます。
これらをまとめあげるプロデュースも、当然のことながらトッド自身によるもの。全体に一発録り風でありながら、コーラスの重ね方などはやはり彼らしい凝り方が感じられます。
なお本作では、”Two Little Hitlers”がエルヴィス・コステロの作品、”Feel It” がチューブス、ウェルニックとの共作である以外は、全て彼自身による作詞・作曲です。エルヴィス・コステロのカバーを演奏するとは意外でしたが、トッドのヴォーカルや演奏もコステロっぽく聞こえてくるのが面白いです。
最後に、本作はアルバムジャケットがかなり物議を醸しました。黄緑色の細胞の集合の上に、当初は6本指の人間の手形が押されている、というものであった。(まさに “Nearly Human” ということなのでしょう。)
これに対し、日本においては各団体からクレームが入ったようで、結果的に日本盤については発売が遅れ、ジャケットも5本指の手形に置き換えられて発売されているようです。
Tracks:
01: The Want Of A Nail
02: The Waiting Game
03: Parallel Lines
04: Two Little Hitlers
05: Can’t Stop Running
06: Unloved Children
07: Fidelity
08: Feel It
09: Hawking
10: I Love My Life
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