2012年、ボブ・ディランデビュー50周年の節目に発表された作品。
この作品がリリースされた当時のディランは71歳。もう完全なおじいちゃんな訳ですが、神様とも呼ばれたこの人は、通算35作目となる本作でもオリジナル作品を世に送り続けています。これはすごいことだと思います。
アルバムの全体のトーンは、かなり重い。「暗い」と言っても良いでしょう。歌詞も人の死を彷彿とさせるものが多くて、普通なら滅入ってしまうのですが、70を過ぎてもなおロックし続ける男が、ブルースを織り交ぜながら奏でるメロディーに心落ちつかされます。
1曲目の “Duquesne Whistle” のイントロを聴いただけで「ボブ・ディランだ」と思います。「ディラン節」なんて言われた、あの畳み掛けるようなヴォーカルも “Narrow Way” を聴いてわかるように、全く衰えがありません。”Early Roman Kings” なんかもその一例ですが、これは1950年代辺りのブルースまんまで、デヴィッド・イダルゴのアコーディオンがかなりいい味を出しています。
“Tempest” は、タイタニック号の沈没事故を歌った、14分近い大作です。ストーリーテラー的に歌うディラン。昔ながらのアメリカ音楽と言っても良くて、このアーシーさに惹かれてこの曲を何度も繰り返し聴いてしまいます。最後を飾る”Roll On John”は、ジョン・レノンのことを歌った曲で、これも彼が世界的に有名になる前から死までのことを歌い上げています。
こんな感じなので、結局のところはボブ・ディランが「死」について取り上げた作品なのでは、と思ったのです。そりゃ重いわけですね。どんどん嗄れてくる彼のヴォーカルにも人生の重みを感じます。
若い人にはこういう作品はあんまりお勧めできませんが、人生のシワを年齢とともに積み上げてきて、甘いも酸いも分かってきた大人の方々にはグッとくる作品でしょう。
Tracks:
01: Duquesne Whistle
02: Soon After Midnight
03: Narrow Way
04: Long And Wasted Years
05: Pay In Blood
06: Scarlet Town
07: Early Roman Kings
08: Tin Angel
09: Tempest
10: Roll On John
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