1958年の年末、ニュージャージーのヴァン・ゲルダー・スタジオで録音された、”The Amazing Bud Powell” シリーズ5作目のアルバムです。
メンバーはバド・パウエル(ピアノ)、ポール・チェンバース(ベース)、アート・テイラー(ドラムス)のトリオ編成。
この時期と言えば、バド・パウエルの活動としては後期に近い頃で、酒と麻薬で身体がおかしくなっていたはず。統合失調症を患っていたようです。その状態での演奏にしては、かなり鬼気迫ったものになっています。バド自身の、例の特徴のある「声」も全曲で入っていることから、相当入り込んでるんだなあという感じです。
(キース・ジャレットのアレもそうなのですが、あの「声」はジャズ評論家の皆さんにとってはどういう評価なんですかね?私は、演奏を聴きたいと思ってしまうので、ないに越したことはないと思ってるのですが、臨場感は感じますね。)
冒頭を飾る “Cleopatra’s Dream”(クレオパトラの夢)は、日本ではバド・パウエルの一番有名なナンバーと言われています。これが何故なのかはちょっと分からないのですが、何かのテーマ曲か何かだったのでしょうか?冒頭からバドは絶好調で、例の「声」を出しながら奏でるメロディ、ミスタッチ?と思われる部分もないことはないのですが、何と言っても彼の勢いを感じます。”Duid Deed” “Down With It” と続く曲でもバドのプレイは勢いを増していき、グイグイと疾走していきます。アルバム全体、この疾走感で最後まで突き進む感じです。
さて、少しだけトリオの他メンバーのことも含めて全体的な話を。私がモダン・ジャズとかバップと言われる分野で一番好きなベーシスト、ポール・チェンバースの演奏は、やっぱり素晴らしいです。チェンバースならではのアルコも”Down With It” で聴くことができて、存在感があります。
アート・テイラーは、派手さはないものの、しっかりとバドを支えるかっちりとしたリズミングがいいです。”Down With It” や “Crossin’ The Channel” での小気味よいドラムソロは聴いていて気持ち良いです。この2人のきっちりした演奏をバックに攻めまくるバドの演奏、これがやはり聴きどころでしょうか。
最後にアルバムジャケットの話を。全体を黒と暗めの青のトーンで、当時のブルーノートの作品らしい配色ですが、パッと見不気味ですらある有名なジャケットです。バドの隣から顔をのぞかせている子供がいるのですが、この子はバドの息子だそうですよ。
Tracks:
01: Cleapatra’s Dream
02: Duid Deed
03: Down With it
04: Danceland
05: Borderick
06: Crossin’ The Channel
07: Comin’ Up
08: Gettin’ There
09: The Scene Changes
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