Jackson Browne/ Running On Empty

1977年発表のアルバムで、数あるジャクソン・ブラウンの作品の中でも一番好きなアルバムです。
構成としては、ライブアルバムなんですが、ライブ会場での通常のライブは10曲中5曲のみ。それ以外は、3曲がホテルの一室、1曲がリハーサルルーム、1曲が移動中のバスの中での収録となっています。

ライブアルバムだからと言う訳ではないのだろうが、この作品では、とりわけ冒頭の3曲 “Running On Empty”、”The Road”、”Rosie” あたりがツアーのバンドが題材となっています。これらの曲で、ジャクソン・ブラウンは街から街へと旅を続けるバンドの悲哀を歌い上げています。自分自身が出張に出た時とか、夕日に向かって車を走らせるときに、ものすごい共感を覚えるのです。
“The Road” でのデヴィッド・リンドレーのスライドギターの物悲しさなんかは、心がキュッとします。

“Cocaine” は、エリック・クラプトンのものとは同名異曲。こちらはギターとフィドルだけのシンプルなバック演奏に乗せて、曲調はどちらかと言えば素朴なのですが、歌詞に具体的な人名 (ジャクソン・ブラウン自身と親しい人の名前)が出てきたりして、これ大丈夫なのかと思う、過激なものと言えます。

“Nothing But Time”、これは冒頭にも書いたが、移動中のバスの車内での録音です。ラス・カンケルのドラムの音(特にキック)は、実際のドラムではなく、何かの箱をドラム代わりに使っているように聞こえます。間奏ではバスのエンジンと思われる音も聞けるし、メンバーのリラックスした雰囲気も伝わってきます。

最後の “The Load-Out”は、Jackson Browneと共に行動していたローディ(ライブのサポートスタッフ)に捧げた曲で、旅の友に捧げる曲。デヴィッド・リンドレーのラップスティール、泣かせますよ。歌詞からも旅情を強く感じるフレーズがたくさん出てきたりして、一人旅なんかしていた日には涙腺が緩くなるに違いない曲です。
この曲に続くように演奏される “Stay” では、本作で大活躍のリンドレーによる特徴的なリード・ヴォーカルまで聴かれ、観客は大喝采。

このアルバムの魅力は、ジャクソン・ブラウンのソングライターとしての才能、つまり曲と歌にあるのですが、本作に限って言えば、これらに加えて普段と異なるロケーションでのレコーディングであることは言うまでもありません。レコーディングスタジオでもライブ会場でもないところでの録音は、彼らの生活そのものであり、気のあったバンド仲間達(デヴィッド・リンドレー、ラス・カンケル、リー・スクラー、ダニー・コーチマー、ローズマリー・バトラーなど)とのリラックスしたやり取りなども聞くことができます。ライブアーティストの生活の一部まで垣間みれてしまう、ある意味非常に変わった、でも決して手を抜いていない作品だと言えます。

Tracks:
01: Running On Empty
02: The Road
03: Rosie
04: You Love The Thunder
05: Cocaine
06: Shaky Town
07: Love Needs A Heart
08: Nothing But Time
09: The Load-Out / Stay


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