以前、木村カエラがヴォーカルをつとめるSadistic Mikaela Band Revisitedの「タイムマシンにおねがい」を聴いて気に入ったので聴きたくなっていた(オリジナルの)サディスティック・ミカ・バンドの名作「黒船」。日本のロックを語る際には押さえておくべき作品なのでしょうが、今まではしっかりと聴いてはいませんでした。
このアルバムが発表されたのは1974年。初めて聴いたのは確か高校生の時(1985年ころ)だったのですが、その当時は、少し古臭い感じがするけど斬新でヘンなアルバムだな、と思いました。高校生の頃と言ったら今から20年強前の話になるので、少なくともノスタルジーを感じることはなかっただろうと思います。
ともかく、発売当時から名作とは言われていましたが、自分自身、良さはあまり感じることなく、ちゃんと聴くには至らなかったことを覚えています。
で、今回改めて聞き直してみました。何せ20年ぶりに聴くのだから、どんな印象を持つんだろう、と思いながら。
第一印象は「荒削り!」。正直こういう印象を持つとは思わなかったです。
メンバーは泣く子も黙る加藤和彦、高中正義、小原礼、高橋幸宏、そしてヴォーカルのミカ。今でも現役。ここで聴ける32年前の彼らは、若さに任せてぐいぐい攻めてくる荒削りな演奏です。特に木村カエラとの比較をしてしまいそうな「タイムマシンにおねがい」。ミカのヴォーカルによるオリジナルバージョンは、奔放さを感じるミカのヴォーカルと、今にも突っ走って行ってしまいそうな「若い」演奏。巧さと言うよりも「ロックしてる!」という感じです。
その次に感じたのは、やはり斬新さ。これは20年前に感じた印象と変わらず。
日本の大衆音楽では、特定の物をテーマにした作品というものは存在していましたが、このような形の「コンセプトアルバム」と呼べる作品は初めてかと思います。冒頭の「墨絵の国へ」で江戸時代にスリップし始め、「タイムマシンにおねがい」でタイムスリップ、黒船(3部作)で黒船来訪、その後も江戸時代の町並みが見えてきたりして、アルバム全体がひとつの物語になっています。
そして、やっぱり「かっこ良い」。彼らの演奏は、ロックにとどまらず、黒人音楽の影響があちこちに見られていて、この融合がとてもかっこ良かったです。これは恐らく小原礼の「跳ねるベース」のためかも知れません。特に「黒船(嘉永6年6月3日)」でのベースの跳ね方はすごい。ファンクしてます。
日本のロックの歴史を知りたい人は当然必携だと思いますし、また普通にロックが好きな人も彼らの演奏は今にも通じるかっこよさを持っているので是非聴いて欲しいと思います。そして、このアルバムは一つのストーリーと捉えて、できる限り全体を通して聴いて欲しいですね。一部の曲だけピックアップしたりせず、「墨絵の国へ」から「さよなら」までをじっくり通して。
改めて勉強させていただきました。良かったです。
Tracks:
01: 墨絵の国へ
02: 何かが海をやってくる
03: タイムマシンにおねがい
04: 黒船 (嘉永6年6月2日)
05: 黒船 (嘉永6年6月3日)
06: 黒船 (嘉永6年6月4日)
07: よろしくどうぞ
08: どんたく
09: 四季頌歌
10: 塀までひとっとび
11: 颱風歌
12: さよなら
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