トム・ウェイツが1987年に発表したこのアルバムは、同名のミュージカルのサウンドトラックという位置付けになっています。妻であるキャスリーン・ブレンナンの脚本によるもので、1986年に上演されました。このミュージカルの内容については詳細を知らないのでここでは省略させていただきますが、彼の生きざまが投影された物語、ということのようです。
さて、アルバムの方に注目してみると、参加メンバーにマーク・リボーの名前をクレジットのあちこちで見ることが出来ます。恐らく、トム・ウェイツが映画俳優として大きな注目を浴びた、ジム・ジャームッシュ監督の「ダウン・バイ・ロー」で共演したジョン・ルーリーからの流れでの起用ではないかという気がします。
マーク・リボーらしい、かなりアヴァンギャルドなギターが随所に聴かれます。
また、ロス・ロボスのメンバーであるデヴィッド・イダルゴも後半の2曲で参加。少し悲しげなアコーディオンをバックにトム・ウェイツのダミ声が加わり、安酒場で入り浸っているような彼を投影させます。
それから本作では、特に冒頭の “Hang On St. Christopher” で聴かれるような特殊なヴォーカル処理です。これは資料を調べてみると、空き缶にマイクをくっつけた自作のマイクとのこと。遠くからエコーを利かせた、つぶれたような声は一種気味悪ささえ感じるのですが、これも彼ならではのもの。
アサイラムからアイランド・レコードに移籍して一気に実験的なサウンドをやり始めたトム・ウェイツらしい音処理だと思います。ここは正直好き嫌いが分かれるも知れませんね。
全体的には、ニューヨーク、ラスヴェガス、カリブ、メキシコを旅するような雰囲気に満ちていて、これぞまさにトム・ウェイツの世界、という独特感があります。”Straight To The Top” のラスヴェガスヴァージョンは、収められた他の曲と比べるとラスヴェガスのショウといった雰囲気がプンプンし、彼の余りのハマり方に思わずニヤッとしてしまいました。
このアルバムを通して聴くと、まるでミュージカルを見たような気分になってしまいます。実際に、この Franks Wild Yearsというミュージカルの方も見たくなる気持ちにもなりました。どうやったら見られるんでしょうね…?
Tracks:
01: Hang On St. Christopher
02: Straight To The Top (Rhumba)
03: Blow Wind Blow
04: Temptation
05: Innocent When You Dream (Barroom)
06: I’ll Be Gone
07: Yesterday Is Here
08: Please Wake Me Up
09: Frank’s Theme
10: More Than Rain
11: Way Down In The Hole
12: Straight To The Top (Vegas)
13: I’ll Take New York
14: Telephone Call From Istanbul
15: Cold Cold Ground
16: Train Song
17: Innocent When You Dream (78)
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