山下達郎 / Ray of Hope

2011年発表の作品です。

元々は、別タイトルで前年秋に発売される予定だったのですが、それが延期になり当初より1年近く遅れてリリースされました。そのためか、本作に収録された作品のうち5曲が既にシングルとしてリリースされており、ちょっと異例な作品であるかと思います。
これらシングルはテレビ主題歌や映画主題歌と言ったタイアップ曲だった、ということもあり、本作を一通り聴いた印象は「これベストアルバム?」という錯覚でした。

最近の山下達郎の作品は、ご本人も認める通りテレビドラマ主題歌をメインとしたタイアップが非常に多いです。言い換えれば、気持ちよく流して聴けるタイプのアルバム、という感じかと思います。その一方、既に山下達郎のシングルを買ってるよという人には、ちょっともったいない感のある作品と言えるかも知れません。いい曲揃いではあるんですが、収録曲の3分の1が既発曲ということを考えると、もう少し新曲が欲しかったなあと思ったりします。贅沢かもしれませんが。

具体的には、「街物語」「ずっと一緒さ」「愛してるって言えなくたって」の3曲がテレビドラマ主題歌、他2曲が映画主題歌、他テレビ番組のエンディングテーマなど、という内容。
山下達郎のドラマ主題曲と言うとバラードが多いので、バラード満載の作品と言うことができますが、もう少しアップテンポなものが多く入っていれば良かったな、と感じました。

さて収録されている計14曲(「希望という名の光」のPrelude, Postludeを含む)の中で一番驚いたことは、山下達郎がProToolを使い始めた、ということです。
山下達郎と言えば、「ポケットミュージック」で初めてコンピュータ(NECのPC-8801)を導入して大きな話題となりましたが、今回は今をときめくProTool。このソフトを一躍有名にしたのは、元々は音程矯正用に作られたモジュールであるAuto-Tuneです。使いようによってはヴォコーダの様な効果が得られることから、シェールがヴォーカルエフェクトとして使い始めたのが最初だそうです。日本では、Perfumeのあの声で有名ですね。

ちょっと説明が長くなりましたが、本作では山下達郎がAuto-Tuneに挑戦。「俺の空」で、わずかにケロケロボイスを聴くことができます。ただし、当然ではありますが音程矯正のためではなく、細かい節回しの部分に少し垣間見えると言う感じ。通常のヴォーカル部分では聴こえない、ということはAuto-Tuneが山下達郎のヴォーカルを矯正する場所がなかった、ということになるのでしょうか。

もう1点、ヴォーカルで気付いたことがあります。それは、最近の山下達郎のシングルを聴いても感じていたことなのですが、ヴォーカルに対するエコーなどのエフェクトがかなり弱められているような気がするのです。(もちろん前述の「俺の空」は別。)
それでもちゃんと聴ける、ということはやはり山下達郎の歌唱力によるところが大きいということになるのだと思います。

私は、本作は山下達郎のヴォーカルをじっくりと聴くことができる作品と思っていて、そういう意味では素晴らしい作品だと思います。このレビューでは初回限定盤についていた「JOY1.5」というライブテイク集のことは詳しく書きませんが、ここでのエネルギッシュな達郎氏とのバランスがまたいいです。詳しく書きませんが、必聴物ですので、できれば初回限定盤を入手して聴いていただきたいです。

Tracks:
01: 希望という名の光 (Prelude)
02: NEVER GROW OLD
03: 希望という名の光
04: 街物語 (NEW REMIX)
05: プロポーズ
06: 僕らの夏の夢
07: 俺の空
08: ずっと一緒さ
09: HAPPY GATHERING DAY
10: いのちの最後のひとしずく
11: MY MORNING PRAYER
12: 愛してるって言えなくて (NEW REMIX)
13: バラ色の人生〜ラヴィアンローズ
14: 希望という名の光 (Postlude)


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